カルテを書いたのに、翌日のスタッフに伝わっていなかった——そんな経験はありませんか。「書き方が人によってバラバラ」「他の獣医師が担当していた患者のカルテが読み解けない」、動物病院のカルテにまつわる悩みは、多くの現場で共通しています。SOAPフォーマットは、そうした属人的な記録習慣を標準化するための有効な手段です。主観・客観・評価・計画の4つの枠に情報を分けて書くだけで、引き継ぎの精度が上がり、限られた診療時間の中でも記録の質を保つことができます。
この記事では、実際の症例をもとにした記入例・よくあるNG表現の改善例・見やすく書くコツをまとめました。
SOAPとは何か
SOAPとは以下の4つの頭文字を組み合わせたものです。
- S(Subjective) :飼い主から聞き取った主観的な情報(訴え・経緯・生活歴)
- O(Objective) :バイタルや身体検査、検査結果など客観的な所見
- A(Assessment) :SとOをもとにした診断・評価・鑑別
- P(Plan) :処置・処方・飼い
- 主指導・次回予定
症例別 記入例
以下の3症例を参考に、S/O/A/P各欄の具体的な書き方を解説します。
① 犬 — 嘔吐・食欲不振(急性胃腸炎疑い)
② 猫 — 頻尿・血尿(FLUTD疑い)
③ シニア犬 — 跛行(変形性股関節症疑い)
① 犬 — 嘔吐・食欲不振(急性胃腸炎疑い)
正しい記入例

よくあるNG例と改善例
カルテ記入で頻繁に見られる4つのミスパターンと、その改善例

② 猫 — 頻尿・血尿(FLUTD疑い)
正しい記入例

よくあるNG例と改善例
カルテ記入で頻繁に見られる4つのミスパターンと、その改善例

③ シニア犬 — 跛行(変形性股関節症疑い)
正しい記入例

よくあるNG例と改善例
カルテ記入で頻繁に見られる4つのミスパターンと、その改善例

見やすく書く 5つのコツ
- 時系列を明記する
「最近」「しばらく前」などの曖昧な表現は、後から読んだときに状態の変化が追えません。「昨日の夕方から」「3日前の朝より」のように起点を具体的に書くことで、経過の把握がスムーズになります。 - 数値で記録する
回数・量・体温・体重など、数字に置き換えられるものは必ず数値化して残しましょう。 「何回か嘔吐」ではなく「3回嘔吐」、「少し食べた」ではなく「通常の1/3量を摂取」のように数値化することで、改善・悪化の判断が客観的にできます。 - S/Oを混在させない
飼い主から聞いた情報は必ずS欄に、院内で実際に確認した所見・検査値はO欄に分けて記載します。「元気がない(飼い主談)」はS欄、「自発的に診察台に乗る」はO欄です。 - 再診基準を必ず書く
P欄に「様子を見てください」だけでは、飼い主はいつ来院すべきか判断できません。「嘔吐が再発した場合」「24時間以上食欲がない場合は再診」など、具体的な基準を書くことで安心感と信頼感につながります。 - 体言止めで簡潔に
「腸音が亢進している」→「腸音:亢進」、「元気が低下しているようだ」→「活動性やや低下」のように体言止めにするだけで文字数が減り、ひと目で読める記録になります。
まとめ
SOAPカルテの品質は、情報の「具体性」と「分類の正確さ」で決まります。本記事で紹介した書き方のコツを実践するだけでも、引き継ぎミスの削減や診療記録の質向上につながるはずです。
一方で、「書き方はわかった。でも毎日の記録が追いつかない」「スタッフによって記載の粒度がバラバラ」といった課題を感じている院長・スタッフの方も多いのではないでしょうか。書き方の工夫だけでは解決しにくいこうした問題は、カルテシステム側の設計によって大きく改善できる場合があります。
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※本記事の記入例は、SOAPカルテの書き方をわかりやすく解説することを目的とした参考例です。実際の臨床現場では、症例の状況・院内ルール・使用する電子カルテシステムの仕様などによって、適切な記載方法が異なる場合があります。本記事の内容が必ずしもすべての状況に当てはまるとは限りませんので、実際の運用は各施設のルールや担当獣医師の判断をもとにご確認ください。