事業承継から移転開業へ、地域の「頼れる病院」を目指して
ー 加賀おかだ動物病院様についてお聞かせください。
岡田先生: 父の代が1980年から開業していて、私が継いだ後に、2015年に石川県加賀市から小松市へ移転しました。現在は犬と猫を診察しています。スタッフ体制は、獣医師が2名、愛玩動物看護師が5〜6名ほどで、来院数は2月など落ち着く時期で1日50件前後です。繁忙期はもう少し増えますね。診療は、一次診療の中で幅広く行っています。専門性を強く掲げているわけではないのですが、必要な範囲は院内で対応しています。
当院の特徴としては、CTを導入していることです。石川県の南の方では当院だけ、という状況なので、紹介症例も比較的多いと思います。福井県が近いので、県外から来られる飼主さまもそれなりにいらっしゃいます。
開業以来ずっと意識しているのは、地域の中で「頼られる場であること」ですね。困ったときに思い出してもらえる、頼ってもらえる存在でありたいと思っています。そういう関係が少しずつ増えていくのは、やっぱり嬉しいですね。
ー 開業されるまでのご経歴と、獣医師を志したきっかけも教えてください。
岡田先生: 一番大きいのは、父が獣医師だったことですね。もともと兄も大学には受かっていたのですが別の道を選んだので、最終的に私が継ぐことになりました。その後、30歳のときに地元に戻って病院を継いだ形です。地域の中で必要なときに頼ってもらえる役割を果たせたら、という気持ちはずっとあります。

「継続できるか」への不安から、電子カルテを選び直すことに
ーVet360を検討し始めた背景を教えてください。
岡田先生: もともと当院では別の電子カルテを使っていたのですが、サービスが撤退することになり、「次を決めないと診療が回らない」という状況になったのが一番のきっかけです。紙カルテからの移行であれば準備期間を取りながら検討できますが、今回はそうではなくて、できるだけ早く次の電子カルテを選ぶ必要がありました。日常診療も忙しい中で、時間をかけてじっくり比較する余裕がないまま、選択を迫られた感覚がありましたね。
そんな状況の中で、以前の勤務先でご一緒する機会があった中村篤史先生が関わっていると知り、まず候補として優先度が上がりました。「中村先生がいる会社なら」という安心感があって、そこを入口に検討を進めました。
ー 短い時間の中で、最終的に何を重視して選びましたか?
岡田先生:とはいえ、それだけで決めたわけではなくて、他社の電子カルテもいくつかデモを見ました。操作性や強みはそれぞれ違うと思いますが、その中で最終的に重視したのは、まず長く安心して使い続けられるかという点です。前の経験があったので、運営母体への信頼感はどうしても大きくなりましたね。 もうひとつは、電子カルテは毎日触るものなので、機能以前に画面が見やすいこと、デザインがすっきりしていて迷いにくいことです。忙しい診療の合間に使うからこそ、ちょっとした見づらさや手間が積み重ならないか、という視点で選びました。
最初は手探り。アップデートを重ねて“いまの使いやすさ”に
ー 導入当初は大変だったと伺いました。定着するまで、どんな山場がありましたか?
岡田先生: 導入した2024年ごろは、今と比べると機能面で「もう少しこうだったら…」と思う場面があり、現場として大変だったのは事実です。診療しながら使うので、ちょっとした使いづらさが積み重なるとストレスにもなりますし、当時はそういう意味で“山場”がありましたね。 ただ、その後アップデートを重ねる中で改善が進み、いまは全体としてスムーズに回せています。以前の山場を越えて、現場の標準的な運用として落ち着いてきた感覚があります。
ー 定着に効いた工夫は何でしたか?
岡田先生: 一番はやっぱり診療記録テンプレートです。もともと一人で外来を回していた時期もあって、カルテを一個一個入力していくのがどうしても煩わしくなってしまうんですよね。
だから「どれだけ早く診察を終わらせて会計に回せるか」――飼主さまの待ち時間を減らすのと、自分もスタッフも早く帰りたいですし(笑)、そのために診療記録テンプレートを作っています。
作り方の考え方としては、追加するより消した方が早いので、最初は少し多めに入れておいて、症例に合わせて削っていく形です。抗がん治療みたいに実施する検査や治療内容が概ね定まっている症例は、テンプレートの効果が大きいですね。初回の診察でも、ひな形があることで、検査や処方の抜け漏れを減らしながら、必要なところだけを短時間で整えられる感覚があります。

診療記録テンプレートは、私だけじゃなく看護師も作っています。たとえば尿検査・便検査は、結果を見やすく、かつカルテ上にきちんと残せるように、項目の並びや入力の形を考えて作っていました。予防関係のテンプレートもよく使っていて、健康診断やフィラリア検査の流れに合わせて、検査内容や予防薬を選択できるようにしています。こういったテンプレートは、実際の運用で使いながらスタッフの声も拾って、必要に応じて微調整を重ねる形で仕上げています。

ー 診療記録テンプレート以外にも、受付管理画面のメモ欄も活用されていると伺いました。どのように運用されていますか?
岡田先生: うちは診察室がいくつかあって、特に一部の診察室は少し離れているので、「いま誰がどこにいるか」が分かりづらくなることがあるんですよね。そこで受付管理画面のメモ欄を、院内共有のための“目印”として使うようにしています。
具体的には、診察室の記号(A・B・Cなど)を入れて「いまどこに案内しているか」がすぐ分かるようにしたり、駐車場で待っていただく飼主さまがいるときはブザー番号を入れておいたりしています。
以前は「この子いま何待ちだっけ?」「呼ぶの忘れてた…」みたいなことが起きやすかったのですが、メモ欄に情報が残っているだけで、スタッフ間での確認が早くなります。受付担当だけでなく看護師も受付を手伝う体制なので、誰が見ても状況が追えるようにしておく、という意味でも役立っていますね。

これからは「記録の負担をもっと減らす」ことに期待
ー 今後、Vet360を使って実現したいことはありますか?
岡田先生: いちばん大きいのは、やっぱりカルテ記録の負担をもっと減らしたいというところですね。診療中はどうしても入力が後回しになりやすくて、結果的に「仕事は終わっているのに入力だけ残る」みたいな形になってしまうこともあります。できればその場でスッと終わって、診療が終わったらそのまま帰れるのが理想です。
その意味で、最近よく話題になる音声入力にはすごく期待しています。入力の手間が減るだけでも現場の負担はかなり変わりますし、診療の流れを止めずに記録が残せるようになると、後から見返すときにも助かると思うんですよね。 一方で医療用語や薬剤名の変換など、精度面での工夫が必要そうだなとも感じています。辞書登録や、入力のルール(どんな形式でまとめるか)を決めることで現場で使いやすくなると思うので、そういった仕組みも含めて、今後うまく噛み合っていくと嬉しいです。
最近はVet360側でも音声入力に関する取り組みが進んでいると伺っているので、現場で使える形になってくるとありがたいですね。そういう形で、診療中の会話をそのまま記録に活かせるようになると、入力のために手を止める時間が減って、現場としてはかなり助かると思います。
一度経験したからこそ、「続けて使えるか」を重視
ー これから電子カルテを検討する病院へ、岡田先生からメッセージをお願いします。
岡田先生: 正直、他の電子カルテを全部詳しく知っているわけではないんですが、使っていたサービスが撤退する経験をしているので、そこからは「途中で使えなくなると困るな」という視点が強くなりました。診療の記録だけじゃなく、院内の運用も全部そこに乗っていくので、導入したあとも継続して使えるイメージが持てるかは、選ぶときに大事だと思います。
いまの時代、これから新規開業で紙カルテを選ぶケースは少ないと思いますし、電子カルテで迷う中ではVet360も十分に候補に入ってくると思います。あとは、実際に触ってみて「自分の病院の流れに合うか」を確認するのが一番ですね。